感動の山 白根三山 
北岳山頂からの甲斐駒ヶ岳
1975年7月19日〜22日
ルート平面図
省略



ルート断面図 拡大
八王子⇒高尾⇒甲府⇒広河原→二股→八本歯のコル→北岳稜線小屋(泊)→北岳→稜線小屋→中白根→間ノ岳→農鳥小屋(泊)西農鳥岳→農鳥岳→大門小屋分岐→大門小屋→林道⇒奈良田温泉(泊)⇒身延⇒甲府⇒⇒八王子

 

7月19日日朝一番の電車にて出発する、 高尾発の鈍行に乗り甲府に行く 駅前よりタクシーに乗り夜叉神峠を越えて広河原に9時40分着。すぐに登山開始する目前のつり 橋を渡り対岸に出て林道を行く、天気は抜群に良いしばらく行くと北岳のバットレスが望める日差しが強いためすぐに汗をかく 沢を登り二股の雪渓に辿り着く、

 ここでゆっくりとインスタントラーメンを作って食事と休憩とする。二股よりさらに大樺沢を 登り詰め雪渓が終わると今までよりもっと急な登りとなる疲れがでてくる、やっとの思いで今日の難所、八本歯のコルに出る コルから少々登って行くと北岳稜線小屋と北岳山頂との分岐があり、今日は遅くなったので山小屋に向かう、 北岳の斜面を北岳稜線小屋に向かう途中空が茜色に染まり、

 今日の一日の終わりにふさわしい夕暮れとなる、 カメラを出してシャッターを何度か切る。北岳稜線小屋着8時00分小屋は満員でわれわれ4人は土間に寝ることになる、 まずは外で食事を済ませる(カレーライス)早めに食べ終えて すぐにかたづける小屋に入り 土間の指定された場所で寝ることにする。


        
大樺沢の登り 二股雪渓の陰で休憩 八本歯のコルから見下ろす大樺沢


 7月20日朝5時起床すぐに朝食の準備、 しかし昨日のカレーライスの為か食欲が湧かない、お茶で朝食代わりとする、6時00分北岳山頂目指して登山開始、 天気は昨日同様抜群に良い、登山道の両側には白、黄色、などの高山植物が咲き乱れている、苦しい登りだが足元に 咲く花に励まされてホッとする、大きく息を吸い、吐き出す、

 小屋より約1時間30分北岳山頂3192mに到着ここからの 眺めは日本一と言っても過言ではないほど素晴らしい、目前の甲斐駒、八ヶ岳、鳳凰、千丈、北アルプス、南アルプス、そして 富士山、今までにない展望だ!それもそのはず富士山に次いで標高が2番目に高い山なのだ、山頂には約30人〜40人の人で 混雑している、約1時間お茶を飲んだり、撮影したりして日本第2位の山頂を満喫する。
北岳山頂を後にし昨日泊まった  北岳稜線小屋へ戻りながら一面に咲く高山植物をカメラに取り込ながらゆっくりと下山する、「天国の花園」という感じだ、 何と言っても素晴らしい、稜線小屋に戻りここで軽食を取る、でも食欲が湧かないので又お茶で食事の代わりとする、 太陽も高くなり陽射しも強くなり気温が上昇してくる、雪を取ってきてポリ袋に入れ歩きはじめる陽射しが強いので顔より 汗がぽたぽたと降るように落ちる袋に入れた雪で顔を冷やしながら中白根3052mの頂に着き、ここで再び休みにする。

        
にぎわう北岳山頂 甲斐駒ヶ岳と八ヶ岳  ミヤマオダマキ



 再び歩き始め、次のピーク。 間ノ岳の登りとなる 後方の北岳は実に雄大な姿だ振り返りピラミッド型の 北岳を望みながら間ノ岳に到着するここで又しばらくの休みとする、今日はどうやら山小屋(農鳥小屋)に早く 到着しそうなので自然と足取りが遅くなる。間ノ岳は分岐点になっていて右に行くと熊野平を経て塩見岳方面、 やや前方は今日の宿泊予定地の農鳥小屋だ、 間ノ岳よりしばらく行くと農鳥小屋に向かって急なガレ場の下りとなる 下のほうに農鳥小屋が見えてくる、自然に足取りも ゆっくりとなり途中何度も休みながらの歩行となる。 16時10分農鳥小屋に到着、今日は昨日と違って早く山小屋に着いたのでゆっくり出来そうだ、 山小屋の目前には農鳥岳の岩山がどっしりと構えている。先ずは小屋でサイダーを買い喉を潤す、  宿泊手続きを済ませ荷物を下ろして食事の用意に取り掛かる ザックより食料を全て取り出す同行の2名は水汲みに行く 30分程して戻ってくるだいぶ下の方に沢が在るとのことだ、今日は美味しく食べられると思っていたら水と 米の量を間違えて芯のある飯になってしまった。インスタントカレーは美味く出来たがライスが発酵したような臭いでとても 食べることが出来なかった、 お米を砥いだあと良く乾燥しないでポリ袋に入れて来たため、お米が蒸れてしまった。 しかしお腹がすいているので無理して一口、二口と食べたが喉をと通らない同行者全員こんな飯食べられないと言いながら処分する、 飯がだめなのでインスタントラーメンを作って食べる事にしたが、これも慌てて作ったため固い麺になってしまう。 あとで気が付いた事だけど標高が3000m以上もある所なので気圧が低い事も原因らしい。

 今日もとうとう満足の行く食事が取れなかった後はお茶を飲んで休む事にする。明日の朝食は自炊の予定でいたが山小屋で作ってもらう事にする、 今回の登山は食べ物にはついてない山登りになりそうだ、夜、西の空に雲が多くなってきた、明日の天気が気になるところだ  しかし 本日はゆっくり休めそうだ 農鳥小屋泊

 7月21日朝5時頃屋根に当たる雨の音で目がさめる、 あいにく今日は雨天らしい このまま下山しようかなどと話しながら出発の準備を始める、暫くすると昨日予約しておいた 食事の用意が出来たとの連絡があり 外を眺めて見ると何時の間にか雨はあがっていて目前の農鳥岳が目に入ってくる  サアー 今日も天気に恵まれたと思い気持ちが明るくなる山小屋での食事も意外と食欲が出ず残してしまった。F氏だけは全て食べ尽くしていた、 飯は残したがお茶は4杯ぐらい飲む 水分は十二分とっている、ついでにお茶をポリタンクに半分程度入れてもらう 

 食事が済み外を見てみると空も晴れてきた。農鳥小屋を6時に出発する今日は意外とよいペースで目前の西農鳥岳を目指す 展望は雲であまり良くはないが雨上がりなのですがすがしく爽やかな稜線歩きとなる 今日も所々で高山植物の写真を撮りながらの スローペースで歩く 途中2度ほど軽く休憩して西農鳥岳3056mに到着する。

 東京より来たと言う2人のパティーと西農鳥岳山頂で逢う、山小屋より貰って来たお茶や食べ物を出して3056mの頂での休みとする、東京より4人出来ていて先行の 2人に追いつくため西農鳥山頂を農鳥岳目指して出発して行った。5分程遅れて我々のメンバー4人も西農鳥を後にする、 5〜6分歩いた所で先頭を歩いているIさんが戻ってきて誰か望遠鏡を持っていないかと聞いてくる

 何か遇ったのか、 2人のどちらかがガレ場にザックを落としてしまったので望遠鏡でどこに落ちているか見てほしいと言っているのだ  落とした現場に行ってみるとそこは西農鳥岳と農鳥岳との間の東側斜面で途中100m程下の所にジャンパーが 落ちているのが見えるがザックは更に下の方に転がって落ちているらしく確認できない、

 あいにく望遠鏡は持っていないが 望遠レンズを付けたカメラで見たが確認できない。ガレ場の少々急な斜面だが登って来られそうなのでTさんと二人で ロープを持ってガレ場を慎重に降りて行く 降っていく途中ザックより飛び出た荷物が散らばっている、拾い集めながら 降りてゆくと稜線の登山道より300mほど下った所にザックが落ちていたザックを拾い今度は散乱した荷物を拾い 集めながら登り始める、

 降るときは楽だがガレ場の登りはキツイ足元の確かな所を確保しながらの登りとなる  途中何度か休む、ロープでTさんを引っ張り揚げながら30分程して稜線の登山道に戻どれる苦しかった  斜面に倒れて大きく深呼吸 休憩でザックを置く場所も注意が必要だと反省させられる 

 農鳥岳山頂まで僅かな行程なので農鳥岳に向かう、ちょいと苦しい登りだが何時の間にか農鳥岳3026mの山頂に到着する、 ここで一息いれる事にする、空は雨が降りそうな雲ゆきになってきたので早々に記念写真を撮り大門沢に向かう、

        
間ノ岳に向かう稜線 何度も休みながら 農鳥岳山頂で休憩


 農鳥岳からトラバースぎみに下ると30分程で大門沢分岐に出る時計を見ると 10時45分 山小屋を出でから4時間30分たっている ここからは稜線から分かれて大門沢に沿って急な斜面をジグザグに下っていく  足元には高山植物が咲き乱れている。疲れた足取りも可憐な花に目を向けると自然に癒されてしまう 何時までも想い出として残る山歩きでの 

 最大の楽しみなのだ。当り一面に咲く花を眺めながら這松帯を暫く下ると休憩するに適した窪地となるお腹もすいて来たので昼食にする 味噌汁を作りパンを貰って食べたがナフタリンの匂いが強く染み付いていて食べられない。仕方ないので味噌汁を飲むと今度は味噌汁に 入れたジャガイモがやはりナフタリンの匂いがする。イャー 今回の山歩きは食べ物に祟られたアー 仕方がないので僅かに残っている 嗜好品を食べて体力の快復に繋げる、

 食事中に雨が降ってくる笠を取り出して雨を避けての食事となる40分程で昼食時間を済ませ再び 大門沢の急坂を降りてゆく 約1時間ほど降りると沢に出る 更に沢に沿って1時間ほど下ると木立の中に大門沢小屋が見えてきた  われ等の予定は今日中に下山する事にしているので農鳥岳から同行した2人と別れて小屋には寄らず下山を続ける。

 途中の休憩は出来る限り短くして林道に早く到着するように歩く大門沢小屋から1時間ほど下った辺りから体力が著しく低下してくる。 食事がまともに出来なかった事が影響してきた ザックより乾パンを取り出して歩きながら食べる。大門沢を何度か吊橋で渡り 森林帯の中を暫く行くと道幅が広くなり更に行くと林道に出る6時15分やっとの想い出林道に到着 

 バス停の小屋の所で立止まり  終バスは当然無い事は判っているが期待感も少し有るので時刻を見る やはり歩くしかないと悟る 後は奈良田温泉宿まで 40分程歩けば着くのだと気を入れ換えていると 車が一台向かってくる。奈良田温泉宿の迎えの車だった  これで疲れた足どりで40分の林道歩きは省略できる。ありがたいなー...



 車に乗り込み?でもどうして 我々4人が林道に下山してくる事が判ったのか疑問なので聞いてみると農鳥岳付近で先を越された2人の 登山者に聞いてきたとの事だった。確か農鳥岳付近で短い会話だったが我々も今日の行程は奈良田まで 下山する話もしていたのだ。宿に着き早速お風呂に飛び込む 体の心から生き返った感じがする。何とも言えない満足感..


 今までの疲れが何倍かの満足感に代わる 温泉で今回の疲れを洗い流し出てくると食事の支度が出来てくる ビールを1本余計に頼み隣で食事をしている、我々の下山してくる事を宿の主人に知らせてくれた2人にお礼を兼ねて ビールを持って挨拶に行ってくる。

 後々この二人の気づかいと宿の主人の連携サービス心に山歩きを止める事が出来ない 何かがある事を思い出す。温泉で温まった体に良く冷えたビールが又何とも言いがたい旨味があり程よく酔ってくる、 脳裏には稜線歩きの出来事、お花畑に咲く花々、急な登り下りも満足感に変っている。食後は宿の手伝い兼遊びに来ている 甲府一高の4人とゲームを楽しむ。11時30分寝床に入ったがTさんと山の話しに夢中になり1時を過ぎてしまう。

 7月22日朝はゆっくりと起きる事が出来る天気は良い 朝食を済ませてから河原に出て川の中でのソフトボールを昨日の甲府一高の4人グループと我々3人  Iさんは何処かに行ってしまったので)とで対戦する。昨日のゲームに続き今日も負けゲームとなる、 しかし川の水はとてもきれいでとても爽やかな気持ちだ

 11時30分の身延行きバスに乗る昨日大門沢小屋に泊まった 4人のグループと再度遇う次の停留場の西山温泉によって温泉に浸かってから次のバスで身延経由甲府に出て帰るとの事で、 西山温泉で降りるのを見送る。早川に沿って身延駅に到着。身延線で甲府に行き甲府城を回ってくる甲府駅で三度 4人グループと一緒になり混雑している電車の中で八王子まで尽きる事のない話しになる...





一万尺の稜線目指して



 太陽が山間より顔を出す頃、大樺沢を頂目指して登坂始める。ザク!ザク!とリズミカルに足音を轟かせていたが、登るにつれて次第に足音が弱くなり、代わりにハッ!ハッ!と呼吸が激しくなって来る、もう太陽は頭上に移動している、顔一面に汗がたれ落ちる苦しい登りだ、

 でも、時折沢を吹き上げてくる風が木の葉をゆすり、頬にあたる一瞬、暑さ苦しさはフッ飛んでしまう、そんな時、目を閉じて耳を澄ませると木の葉のざわめき、沢を流れる雪解け水の音、そして沢風に乗って小鳥のメロディーが流れてくる。これこそ都会では味わうことの出来ない自然のシンフォニーだ、

 さらにあたり一面に咲き競っている可憐な花々が一層とムードを盛り上げてくれる。自然のシンフォニーに励まされて苦しい登りも終わり、何時しか夕焼け空に包まれた一万尺の稜線に辿り着く。そして次第に星空の世界へと移り変わり一日の終止符を打つ。